災害リスクを減らすために私たちができること
2019.02.28
今年も3.11がやってきます。
あれから8年経つわけですが、東北に住む知人に聞けば、復興はまだ道半ばとのことです。どの時点で「復興を遂げた」といえるのかわかりませんが、
まだ8年、
いまだに2500人以上の行方が分からないままという現実を目の当たりにすると、いくら町がきれいになっていったとしても、復興というゴールは無いようにも思えます。
私たちの仕事、建築というのは、人の命を守るハコをつくることとも言えます。
どんな科学技術でもっても自然災害には太刀打ちできないこともあります。しかし、持てる知識をフルに活かし、人の命にふりかかるリスクをすこしでも減らすことに役立たせることはできるはずです。私たちは、正しい情報をお客様に提供し、お客様が冷静な判断をできるようにお手伝いすることに徹するのみです。
例えば土地探しにおいては、その土地に自然災害のリスクはあるかどうかを信頼できる情報とともにお客様に伝えるように努めたり、建物においては、最低でもこの地方で想定されている最大震度には耐えられる建物を提供することが最低限の責務といえるでしょう。
「蒲郡は海が近くて津波が心配だから、海抜の高い土地がいい」といわれることがよくあります。津波は海からやってくるので海抜が高いほうが津波の危険性にさらされるリスクは低くなるでしょう。しかし、蒲郡の市街地は比較的海に近い平地(海抜でいえば約20メートル以下)に形成されています。さらに、比較的利便が良いとされるJR沿線で駅から徒歩15分圏内となれば、海抜は10メートル程度以下になります。
「生活は便利なほうが良いが、海抜は高い方がいい」とお客様は考えるわけですが、そんなとき、例えば以下の図(=津波浸水想定図)のような情報をお伝えすることによって、判断のひとつの目安を持っていただくこともあります。
津波浸水想定図(蒲郡市) 赤色が浸水深5-10Mを示しています。※南海トラフ地震において蒲郡市は津波想定最大6メートル、最大震度は7と想定されています。
西尾市における浸水想定図。西尾市においては赤いところ(浸水深5-10M)はほとんど無く、ピンク色やオレンジ色(浸水深1-5M)のところが多くなっています。(黄色や黄緑色は浸水深1M以下を示しています)
※蒲郡市・西尾市いずれも平成26.11.26に愛知県が発表したものを転載しています。
海抜が高い、とは何メートルを言うのか。その判断基準を持ち合わせているお客様は少ないでしょう。お客様は漠然とした不安(津波が心配、液状化が心配)であることが多いです。しかしその不安は「命が助かるかどうか」の不安であるため、決して軽々しく対応してはなりません。お客様に正しい情報に接してもらい、納得できる判断をしていただけるようにするのが私たちができる仕事のひとつだと思います。